静寂に心が整う、開創500年の寺を歩く
長慶山鳳林寺
歴史・文化
- バス停より徒歩20分以内
- 写真映え
- 史跡・資料館
- 心が整う
- 神社仏閣・札所巡り
2025.11.28
清澄な空気をまとう場所
下小鹿野に位置する長慶山鳳林寺は、緑に囲まれた静かな町並みにどっしりとたたずみ、そこから地域の人々の生活を見守っているかのようだ。広々とした駐車場に車を停めて外に出る。「こんにちは。いつも見守っていただき、ありがとうございます。」意図せず口から出た言葉に、参道への足も軽くなる。合掌して一礼し山門をくぐると、立派な本堂が静かにたたずんでいた。境内から見える山の緑が目にやさしく、遠くで風が木々を揺らす音だけが聞こえてくる。その外観を見上げると、自然と背筋がぴんと伸びた。
開創500年の歴史をもち、多くの修行僧が集った寺院
本堂を参拝し、境内を歩く。どこからともなくお線香の香りが漂い、心がすっと落ち着いていく。ゆっくりと歩くだけでも、心が整っていくような場所だ。
鳳林寺の歴史は、室町時代までさかのぼる。才屋尊芸大和尚(天正15年)を開山とし、のちに幕府より寺領五石を賜り、末山12ヶ寺を有するに至る曹洞宗の寺院だ。かつては多くの修行僧が集い、この地の信仰と文化を支えてきたと伝えられている。鳳林寺の概略史には、「1546年(天文15年)本堂を托鉢(たくはつ)と村民の労力奉仕により旧街道立石の地に建立す。」とある。山深いおがのの地にありながら、学問と修行の場として栄え、長い年月をかけて地域の信仰を支えてきた。その後、1620年(元和6年)に、本堂を現在地に移築した。
守り、守られてきた地域との絆
1944年(昭和19年)2月1日、おがのまちは大火に襲われた。その際に「鳳林寺が焼けちまう」「鳳林寺を守れ」と駆けつけたのが、秩父市田村の消防団と地域の住民だった。こうした人々に守られ、鳳林寺は一度も火災になることなくこの地に根付いている。
寺宝には黄檗木奄氏の墨跡「長慶山鳳林寺」の紙本が所蔵されており、昭和37年9月20日に町指定有形文化財とされた。令和6年に再構築された外壁もまた、檀家でもある地域の名匠の手により、大切に築かれたのだという。境内の至る所に、地域住民とのつながりや、歴代の住職が人々と守り抜いてきた人情味を感じる。先代住職の「お寺は地域に対して還元する機会が重要である」という信念のもと、40年近くにわたり大晦日にはお焚き上げも行われている。
バス停近く、国道299沿いのアクセスのしやすさ
鳳林寺は西武秩父駅より西武バス約30分、寺上バス停下車徒歩2分。
境内には駐車スペースもあり、観光の途中に立ち寄るのにも便利だ。御朱印は本堂脇の御宝印所で受け付けている。席を外している場合は、インターホンを押してほしいとのこと。本寺に祀われている四天王のうち多聞天は、毘沙門天として特に崇敬があつく、「秩父七福神」のひとつである。仏法守護・病魔退散・財宝来福の神として信仰されている。
